曳家工事・沈下修正専門会社 我妻組 のホームページご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は軽量鉄骨2階建て会社事業所の地盤沈下による修正と同時に、嵩上げ工事の発注から完了までの流れについて、実際にご依頼いただいた内容を元に全4回に渡るシリーズでご紹介させていただきます。1回目の記事です。

近年は、地震以外にも水害による建物被害が増えています。鉄骨建屋を所有する会社様が、沈下修正ならびに嵩上げ工事を考えている際にご参考にいただければ幸いです。

なお、沈下修正工事とは、地盤に何らかの変化があって沈下や不良になった建物を基礎から持ち上げて傾きを直す工事です。主に地震の影響によるケースや軟弱な地盤に家を建てたケースがほとんどで、地下水の汲み上げ等によっても発生することがあります。嵩上げ(かさあげ)工事とは、既に建っている建物をジャッキを用いて持ち上げ、基礎または1階部分を高くする工事のことです。冠水による床上浸水被害を防ぐ対策や豪雪地帯の雪害対策にもなります。

今回の建物の地盤沈下修正+嵩上げ工事のケース概要は以下の通りです。

所在地埼玉県幸手市
物件軽量鉄骨2階建て128平米事業所
相談の理由沈下修正業者(他社)の見積金額が高すぎたためずっとそのままにしていた。
工事中の弊社の現場を見てみて、現状と予算について聞いてもらいたい。
工事の理由地盤沈下による建物修正と、床下浸水被害防止のため
現地調査1回
沈下状態最大104mm
嵩上げ20cm
検討期間見積から1週間
発注理由工期と予算が合致、嵩上げ工事も同時発注
工法耐圧板工法
工期2ヶ月
付帯5年補償保険加入

地盤沈下修正工事中の現場にて現地調査と見積のご相談
我妻組に現地調査を依頼するメリット

施工現場を見ている方から話しかけられることが時々あります。そんな方は、大体どんな工事をしているのか興味を持っています。興味半分の場合もありますが、沈下修正工事の業者を本当に探されている場合があります。

今回のケースは、近隣の方がわざわざ現場に来られて相談くださいました。

職人がお話しを伺ったところ、経営されている事業所の建屋が少し傾いていて、他社に沈下修正の見積依頼をされたようでした。しかし、予算よりも大幅に施工金額が高くて諦めていたとのことです。

職人からそのような連絡を受けて、本社よりそのお客様にお電話差し上げました。ちょうどその時は各現場のスケジュールが立て込んでおり直ぐにはご対応できませんでしたが、どちらにしろ修正を諦めていたのでお待ちいただけるとのことでした。

現場がひと段落してから、お客様の事業所に伺って現地調査をさせていただきました。

建物内を拝見して、確かに地盤沈下の影響による傾きが計測できました。また、建物周辺をを調査したところ、駐車場がアスファルト敷になっており、基礎を持ち上げるための掘削作業は通常の土よりも施工金額が嵩む箇所が多々ありました。

また、他社へ見積依頼された際に提案された工法は、鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)だったことが分かりました。

鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)とは

鋼管を地中深くまで打ち込んで地盤に建物の重量に耐えうる支持力を得る工法です。地盤強度が非常に軟弱な場合に使用されます。地盤沈下を修正するための工法としては、最も再発の恐れがなく、最も施工費用かかる工法のひとつです。図にすると以下の通りです。

沈下修正-鋼管杭圧入工法
鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)

沈下修正工事にあたって、最も大事なのは地盤の調査結果です。つまり、建物が建っている地盤の状態です。そもそも弱い地盤なのか強い地盤なのか。そして、現在進行形で沈下状態にあるのか、既に沈下が収まっているのか。

今回の現地調査にて、改めてお客様にヒアリングさせていただき、築年数と建物の重量、近隣の地盤データを照合して計算しなおしたところ、既に地盤沈下はおさまっているものと判断できました。

築年がある住宅の地盤は、過圧密状態の傾向にあります。

過圧密状態は、建物が建つ前よりも建った後の方が建物に耐えうるだけの状態まで地盤が強くなっていることを言います。この過圧密状態になっていると、ほとんどの場合は地盤沈下が止まっています。地盤沈下が止まっている場合は、軟弱な地盤であったとしても、高額費用がかかる鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)を選択しなくても、地盤沈下の再発のリスクは低くなります。

そこで、これらをお客様に説明差し上げて、鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)以外の工事方法として、耐圧版工法(ラップル杭工法)もご提案いたしました。これを選択することで、工事金額が1/3以下まで下げることが可能になります。

耐圧版工法(ラップル杭工法)とは

基礎下を掘り、ブロックや砕石を敷き込み、締め固める事によって支持力を得る工法です。

沈下修正-耐圧板工法
耐圧版工法(ラップル杭工法)

もちろん、鋼管杭圧入工法(アンダーピニング工法)は工法として悪くありませんが、こういったケースでは様々な現場を経験している業者に相談された方が選択の幅が広がります。
近年、沈下修正を元請けで行なっている業者は直ぐに杭を打ちたがる傾向にあります。それは、現場の経験不足と補償等問題からの回避、ひと現場の売上増が見込めるなどの業者の都合による場合が往々にあります。高額な工事になる地盤改良であっても、過圧密状態を考慮した上での地盤の沈下修正工法を選定ができれば、お客様にとっては無駄な費用をかけなくても良くなります。弊社の現地調査ではそのような提案も出来ます。

お客様に十分にご説明させていただいた上で、耐圧版工法(ラップル杭工法)にて見積提出させていただいたところ、即決で工事のご依頼をいただきました。

また、近年多く見られる豪雨被害を懸念されており、予算が圧縮されたところで少しでも安心して経営できるようにと、建物を嵩上げもして欲しいとのご希望がありました。確かに、地盤の沈下修正工事の延長で、建物基礎を嵩上げすることで、嵩上げ工事の費用まで抑えることが可能です。

嵩上げ工事の見積を追加して提出したところ、地盤沈下修正+嵩上げ工事の施工が決定しました。

今回の地盤沈下工事+嵩上げ工事費用の見積までのお客様の主な流れ

  1. 弊社が工事している現場に足を運んで相談(1時間程度)
  2. 電話での現地調査日程の調整(15分程度)
  3. 現地調査(1〜2時間程度)
  4. 見積後の電話(15分程度)
  5. ご契約書類の受け取り並びに郵送(1時間程度)

なお、今回は工事が立て込んでいる最中でのご依頼であったため、ご相談から現地調査までに約4ヶ月間お待ちいただきました。同様に地盤沈下修正を諦め気味でいらっしゃる方のご参考になりましたら幸いです。

工事の内容については、次回の記事でご紹介します。

最後までお読みいただきありがとうございました。(文・我妻組 代表取締役 我妻敬太