曳家工事・沈下修正専門会社 我妻組 のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は再沈下の危険性が高い「ブロック杭だけの工事」の実態についての事例を紹介します。東日本大震災で地盤沈下した家屋を沈下修正工事(他社)して再沈下してしまった事例です。弊社にて再沈下修正工事をしましたので、その事例を全2回シリーズでご紹介します。前回の記事はこちら
巨大地震によって大規模な地盤沈下が起きると、沈下修正工事の需要が一気に高まります。それによって、手抜き工事や経験不足による工事が行われることが往々にあります。地震によって被災した方が、沈下修正工事に関してご参考にいただければ幸いです。
なお、沈下修正工事とは、地盤に何らかの変化があって沈下や不良になった建物を基礎から持ち上げて傾きを直す工事のことです。主に地震の影響によるケースや軟弱な地盤に家を建てたケースがほとんどで、地下水の汲み上げ等によっても発生することがあります。
今回の建物の再沈下修正工事のケース概要は以下の通りです。
所在地 | 茨城県ひたちなか市 |
物件 | 木造2F住宅 |
相談の理由 | 前業者が廃業しているため、検索で弊社ホームページを見て |
工事の理由 | 東日本大震災で被災した家屋の再沈下 |
現地調査 | 1回 |
沈下状態 | 最大15mm |
ジャッキポイント | 基礎下1箇所 サッシ上1箇所 |
検討期間 | 見積から1週間 |
発注理由 | 工期と予算が合致、 |
工法 | 耐圧板工法 |
工期 | 5日 |
付帯 | 5年補償保険加入 |
1.ジャッキアップ時に閉まらなくなっていたサッシ
前回の記事で再沈下してご依頼いただいた住宅の施工を行います。前業者がジャッキアップさせた際にサッシが湾曲して開かなくなっていました。経験が少ない業者が、建物の構造と重さを考慮せずに施工すると細かい部分でのミスが起きやすいです。壁のない開口部にジャッキをかける際は十分な検討が必要です。建物の重みがないため、ジャッキの力がサッシを変形させてしまいます。
サッシを交換すると数十万円もかかるため、「ダメ元でよいのでと」杭ハリ下げができないかとお客様のご所望がありました。沈下修正施工で建物を持ち上げると同時に、サッシ枠に柱とジャッキをセットして、サッシの湾曲も一緒に直らないかという算段です。
業者選定をしっかりしないと沈下修正の工事以外にも、こういったサッシ修繕の出費が重なってきてしまいます。実際には基礎下からの曲がりがあったため、この方法ではこれでは直りませんでした。元々、ダメ元ではあったため、弊社では最善を尽くして施主様にはご理解いただきました。
2.瓦解した杭と剥き出しの調整台
隙間だらけの基礎下
10年前に沈下修正工事をした業者が、沈下修正後に基礎下の隙間をそのままにしてしまっていました。これらの隙間が、今回の再沈下の原因となったわけです。大規模地震で沈下修正需要が増えると、とりあえず建物の水平だけを直して地盤改良を怠る業者が後を立ちません。隙間充填すると工事費が高くなり見積金額が上がってしまうからです。
建物の沈下修正では、施工後に基礎下までチェックする施主様はまずいません。もし、今回の記事を読んで、沈下修正工事を施工の安さで業者を選択された方は、一度、基礎下が隙間がないかチェックされても良いかもしれません。
3.瓦解したブロック杭の箇所を
再度持ち上げて束を修正
上記の図の位置にジャッキをセットして、建物を持ち上げました。また、再沈下した影響で建物の大引き下の柄が歪んだり緩んでしまっていたため再度調整しました。
これで建物の傾斜が元の状態に直りました。前回の業者はここまでの施工で終わっていましたが、沈下修正の施工ではここからが大事です。このままでは、再沈下の恐れが高いままです。持ち上げて基礎下に空いている空洞を埋めなければなりません。
4.基礎下へミルクセメントを流し込み
隙間を充填して再沈下しにくくする
地盤沈下によって家が傾いた場合は、沈下修正の工事をすれば必ず基礎下に空洞ができます。これにセメントを流し込んで埋めていきます。そうすることで、基礎下に隙間埋まって地盤が強固になり、再沈下しにくくなります。
本来は、ここまでの施工を行って沈下修正工事と言えます。これをちゃんと行なってくれる業者かどうか見分けるには、見積段階でちゃんと施工内容を聞いておく必要があります。また、保険会社などの第三者補償をしてくれている業者かどうかでも判断ができます。第三者補償では、こういった施工がしっかりしていない業者は加入できないからです。
5.床下土の埋め戻し
隙間充填が終われば、床下の土を埋め戻して整地された綺麗な状態に戻ります。この状態が本来の施行後の姿です。隙間だらけだった床下が元に戻り、施主様にもご満足いただきました。
今回の再沈下修正工事のお客様の主な流れ
- 工事説明(1時間程度)
- サッシ枠の相談と施工立会い(2時間程度)
- 工事完了報告(30分程度)
- 引き渡し後の書類受け取り入金等(1時間程度)
今回は、震災の影響によって他社で沈下修正工事をされた住宅が、再沈下してしまった事例をご紹介しました。沈下修正工事は、建物の傾きが直ればそれで良いわけではないことを、前回の記事と本記事をあわせて知っていただけたのではないでしょうか?
震災によって住宅が傾くと自治体から補助金が出る場合がありますが、だからといってその工事を安い業者に頼んでしまうと、こういった再沈下する恐れがあります。それは、住宅を傷つけるだけでなく、再沈下の規模によっては家自体が崩れることにもなりかねません。また、その修繕にかかる出費は決して安くありません。
現在、沈下修正工事をご検討されている施主様は、ぜひ心に留めておいていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。(文・我妻組 代表取締役 我妻敬太)