曳家工事・沈下修正専門会社 我妻組 のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。
本記事では、2024年の能登半島地震による液状化被害を受けた住宅の沈下修正工事(新潟市西区)の事例をご紹介します。被害の深刻さや調査の様子をお伝えする【全2回シリーズ】のうち、今回は「現地調査編」です。

なお、液状化や地震による住宅の傾きに対する補助金制度が自治体によって設けられている場合があります。
対象になる可能性もあるため、該当される方はお住まいの市区町村にお問い合わせいただくことをおすすめします。

今回の沈下修正工事のケースは以下の通りです。

所在地新潟県新潟市西区
物件木造2F住宅
相談の理由能登半島地震で建物が傾いたため
工事の理由液状化による不同沈下
現地調査1回
沈下状態最大313mm
ジャッキポイント見積時27箇所/施工時33箇所
検討期間見積から3ヶ月
発注理由同業者からの紹介
工法ダブルロック工法 + 地盤補強
工期2ヶ月
付帯5年補償保険加入

液状化で傾いた住宅
最大313mmの沈下を確認

今回の対象物件は、築年数はやや古いものの、内外装ともに綺麗にリフォームされた一戸建て住宅です。

敷地内の車庫内部には大量の泥が流入しており、液状化によって水分を含んだ土砂が建物内に押し寄せた痕跡が見られました。外周には水たまりが多数残っており、大きく沈下していると見られる箇所を掘削したところ、地下から水が溢れ出すほどの被害状況でした。

このような液状化現象は、軟弱な砂質土地盤で見受けられます。本案件の様に海抜が低い位置になる土地は、水位が自然に下がることが無い場合もあります

さらに、敷地内には地割れ(亀裂)や小規模な陥没も多数確認されました。精密に傾斜測定を行った結果、住宅全体が大きく最大313mm沈下しており、明らかに傾いている状態でした。

施工前レベル

新潟市西区の住宅傾き状況(施工前)

赤字で記されているマイナス箇所が沈み込んでいる箇所です。最大沈下ポイントは-313mmになっていました。床上の丸いものが勢いよく転がって生活できないレベルでした。

「ダブルロック工法」を選択

ダブルロック工法とは

  • 基礎下の沈下部分を耐圧版で持ち上げる
  • 軟弱地層にセメント系薬液を圧入して地盤改良

この2つを同時に行うことで、強度と再沈下防止性を両立させる工法です。杭を打ち込む「アンダーピニング工法(鋼管杭圧入)」と比べて、工期も短縮でき、コストが抑えられ点が特長です。したがって、液状化等被害住宅修繕支援補助金(新潟市)を活用して住宅の傾きを直しやすくなります。

ただし、今回のような液状化による地盤沈下では、ダブルロック工法だけでは再沈下リスクが拭えません。そのため、施主様には以下のような説明をしてご理解をいただいた上でご選択いただきました。

ダブルロック工法や薬液注入工法は液状化に効果があるとは言えません。そのため、弊社では薬液注入工法による地盤補強はあまりお薦めしていません。薬液注入による地盤補強は「若干の強度増加」しかできません(費用をかければ液状化にも対応できる場合もあると思いますが)。ほとんどの場合、薬液注入による液状化への効果は「やらないよりはやった方が効果がある『かもしれない』程度」です。施主様としては「薬液注入による地盤補強は効果がある」と言われると「薬液注入をしたことによって液状化は起きない」と思われると思います。しかし、国土交通省住宅局によると、N値(地盤支持力を表す数値で1あたり約1トン)は15を超える必要がある事がわかります。これは薬液注入ではかなり難易度が高いと思われます。弊社では「多少の地盤強度増加でもいいから薬液注入を行いたい」とお考えの施主様にのみ薬液注入を実施しています。

次回の【施工編】では、実際の沈下修正工事の流れと、軟弱地層の深さや状態の調査内容について詳しく解説いたします。液状化によって住宅が傾いた方、同様の地盤で不安を感じている方は、ぜひ続編もご覧ください。

(文責:我妻組 代表取締役 我妻敬太

沈下修正工事(地盤沈下対策)