社寺山門の曳家工事(山形県朝日町)

曳家工事・沈下修正専門会社 我妻組 のホームページご覧いただき誠にありがとうございます。

今回は曳家工事の完了までの流れについて、実際にあった内容を元に全3回に渡るシリーズでご紹介させていただきます。今回は最初の1回目です。お寺や文化遺産等の「建築物基礎改善」、そのままの形を維持する必要がある「建物の移動」をされたい方は参考にいただければ幸いです。

なお、曳家工事とは家引きや曳屋とも呼ばれる建物を解体せずにそのまま移動することです。住宅、ビル、お城までそのままの状態で移動することができます。「道路拡張工事」や「区画整理」の「土地の有効活用」に有効です。よろしければ、弊社の曳家工事事例もご覧ください。

今回はお寺の山門(仁王門)の曳家工事です。ケース概要は以下の通りです。

所在地山形県朝日町
物件永林寺 山門(仁王門)
相談の理由地元工務店様からの曳家移動依頼
工事の理由老朽化改修工事にあわせて基礎の土台工事
現地調査1回
検討期間現地調査から1年
発注理由工事方法と見積金額に納得
工法曳家工法(移動2回)
工期約1ヶ月半

曳家移動前の段取り-鋼材やジャッキの設置

現地調査より約一年経ち現場に施工班が現場に入りました。地域の文化財などの工事は、様々な承認が必要になるため見積提出から施工まで時間がかかるのがよくあります。我妻組では、施工班が常時2班動いますが、工事日程の調整等も要します。

施工担当は、職長飯沢(経験10年以上)です。元大工職人で頼られるリーダー格の一人です。
そのほかに、1〜2名が現場に入りました。

今回は、100年以上前に建てられた山門の基礎を新しく作る工事があるため曳家移動を2回行います。
1回目は山門を前に動かす仮置き移動、2回目は元の場所に新しく出来た基礎の上に戻す移動です。
工事費用をなるべく抑えるため、事前に山門の内部の仁王像と壁を外して行いました。

曳家工事では、建物の移動よりもこの段取り作業に最も時間を要します。
古い木造建築の建物の場合は、柱や梁等の劣化を考慮して、建物が耐えられるように持ち上げる力が加わるようにしなければなりません。基本的に建物は移動することを考慮されていないため、建物自体はしっかりしていても移動中の些細な揺れに耐えられるか見極めなければなりません。
こういった図面がない現地での現状を考慮した段取り作業は施工経験値を要します。

弊社では、重要文化財・弘前城国宝・根本中堂 の沈下修正工事や、東日本大震災の津波被害で残った命のらせん階段3階建てビル の曳家などの難しい建物の案件を多くこなしてきた実績があり、こういった旧跡の現状を考慮した曳家を得意としています。

朝早く米沢市の本社を経ち、曳家に必要な資材を運び込んで鋼材の設置します。
山門の壁が取り外されているため、移動中の横揺れに耐えられるように建物の柱の強度補強を行い、建物の全ての重さを2本の鋼材で支えられるように段取りしていきます。今回は、この作業に約2週間要しました。

弊社で使用する鋼材は、一般的な曳家業者が使用する鋼材よりも強度が2倍以上あるものを使っています。建物を持ち上げた際に鋼材のたわみを少しでも減らして、建物の歪みを最小にするためです。これによって、移動中にかかる建物への負荷を減らして破損のリスクを軽減します。

ジャッキを設置して段取りが完了すれば、とうとう地切りです。
地切りとは、建物を地面からの切り離すことです。今回は、基礎となっている石に直接乗っている柱を持ち上げます。曳家職人が曳家作業で最も気を使う瞬間です。

社寺山門の地切り

無事、100年以上の間、山門の重みを支えてきた石の上から柱が持ち上がりました。

今回の現地調査から曳家工事段取りまでの工務店様の流れ

  1. 現地調査(1時間程度)
  2. 見積受取、説明(数10分程度)
  3. 検討、費用の確保(約1年)
  4. 発注・施工日決定(数10分程度)
  5. 曳家段取り前の工事(数週間)
  6. 曳家工事説明(1時間程度)

現場以外での相談や打ち合わせは全てメールと電話だけで完結しました。
もし、曳家工事をお考えの方がいらっしゃいましたらご参考にされてください。
次回は、この山門の曳家移動から仮置きについてご紹介します。

最後までお読みいただきありがとうございました。(文・我妻組 代表取締役 我妻敬太