曳家工事・沈下修正専門会社 我妻組 のホームページご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は不同沈下修正工事の発注から完了までの流れについて、実際にあった内容を元に全4回に渡るシリーズでご紹介させていただきます。今回は2回目です。現地調査から本見積までの流れをお知らせします。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。
お住まいの家や中古住宅に「ヒビが入っている」「傾いている」と思った方は、リフォームをされる前に参考いただければ幸いです。
なお、不同沈下修正工事とは、地盤に何らかの変化があって沈下や不良になった建物を、基礎から持ち上げて傾きを直す工事です。主に地震の影響によるケースがほとんどで、地下水の汲み上げ等によっても発生することがあります。
今回の一般住宅の不同沈下修正工事のケース概要は以下の通りです。
所在地 | 宮城県仙台市 |
物件 | お住まい中の築34年木造2階建て住宅 |
相談の理由 | 検索で弊社ホームページを見て概算見積を依頼 |
工事の理由 | リフォーム検討中に工務店から地盤による建物の歪みを指摘 |
現地調査 | 1回 |
沈下状態 | 最大55mm |
検討期間 | 相談から1ヶ月半 |
発注理由 | 工事方法と見積金額に納得 |
工法 | 耐圧版工法 (ラップル杭工法) ジャッキポイント22ヶ所 |
工期 | 約1ヶ月 |
付帯 | 5年補償保険加入 |
不同沈下修正工事の現場でポイントを確認する現地調査
ご相談から1週間ほどで現地調査の依頼をいただき、日程を調整してから現場となるお客様宅にお邪魔しました。

現地調査では、住宅の外側のポイントとなる部分と床下、室内から住宅構造を確認させていただきます。どこがどれだけ沈んでしまっているのか数値レベルを測って図面に書き入れていきます。今回は以下のような数値レベルになりました。

画像の数値レベル調査簡略図面(mm)では、赤字のマイナスが大きいほど地盤沈下しています。
この住宅では、最大-55mmの沈み込みが確認できました。傾斜角度が約8/1000(※)です。
感覚的にも歪みが分かり、ビー玉が床を転がるレベルの傾斜角度です。
(※)傾斜角度1/1000が1メートルにつき1mm傾いている状態
沈下修正工事業界では、傾斜角度3/1000ほど傾いていると人間の感覚的には違和感を感じると言われており、6/1000を超えていくと苦痛や健康被害の恐れがあると提唱されています。詳しくはこちら
また、今回のお客様のお宅には、新築された際に地盤を調査した地盤調査報告書がありましたので拝見させていただきました。この報告書があると、家の下の地盤の状態が数値的に分かります。過度な工法での不同沈下修正工事をする必要もなくなり、適正な工法による工事で費用を抑えることができます。お持ちであれば、再度、地盤調査をする必要がありません。
自宅の不同沈下修正工事の相談や見積依頼前には、新築時の資料を引っ張り出して地盤調査報告書があるかどうか確認しておきましょう。
現地調査によって適正な沈下修正工事工法を選択
地盤調査報告書を拝見し、耐圧板工法で十分と判断できました。なお、工法に関しての費用と期間の目安は以下の通りです。
工種 | 工事費 | 工期 | 精度 | 備考 ※1 |
---|---|---|---|---|
ダブルロック工法 | 300 | 20 | ◯ | 恒久性を重要視したい場合適する。 |
土台あげ工法 (プッシュアップ工法) | 100 | 10 | ◯ | 沈下量が少なく地盤強化不要の場合適する。 |
耐圧版工法 (ラップル杭工法) | 200 | 15 | ◯ | 沈下量が少なく地盤強化不要の場合適する。 |
土台あげ工法+地盤補強工法 | 200 | 15 | ◯ | 沈下量が少ない場合で恒久性も重要視したい場合適する。 |
旧薬液注入工法 (樹脂系または水ガラス系工法) | 400 | 15 | △ | 工場など工期がなく一時的な場合適する。 |
鋼管杭圧入工法 (アンダーピニング工法) | 600 | 35 | ◯ | 5t程度で強い地盤 (岩盤等) に杭先が届く場合適する。 |
曳家工法 | 800 | 45 | ◯ | この際位置も変えたい場合適する。 |
なお、アンダースピニング(鋼管圧入)工法は杭打ちで建物を抑えるため、強固な沈下修正ですが、工法として非常にコストがかかります。また、更地にする時には産業廃棄物が埋まっていると判断され土地の価値を下げることにもなるため、一般住宅の場合には我妻組ではおすすめしておりません。
事務所に戻ってから、耐圧板工法での正式な本見積書を作成して、お客様にお送りしました。
このほかには、傾斜レベル調査報告書、ジャッキポイント報告書を提出しております。
今回の本見積書提出までのお客様の主な流れ
- 現地調査日程の調整(数10分程度)
- 現地調査立会いと工事説明(2時間程度)
- 本見積書の受け取り
本見積書の受け取り後は、お客様が施工されるかどうか施工日をいつにするかご判断いただくようになります。
同じ悩みをお持ちの方のご参考になれば幸いです。
次回は、沈下修正工事職人入りから施工 についてご紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございました。(文・我妻組 代表取締役 我妻敬太)